中長ブログ - sakaguchiさんのエントリ |
2009/12/16
本格恋愛陸上小説『蘭』第3話
執筆者: sakaguchi (21:55)
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不幸とは、一度起こると連鎖するものである。 あきみつが電車の事を考えすぎて電車のおもちゃを頬にこすりつけながらでないとと生きられない体になって以降、 やれ風邪やら、やれファックファック叫ぶやら、やれボーリングのとき足コチョコチョ動かしてまうやら、 やれやけに長いランパン履くやら、やれ雨の日髪の毛気にして外でないやらといった奇病が流行し、 予選会を満足に走れるような選手は、ほとんどいなくなってしまっていた。 しかし、そんなことは関係なく時間は過ぎる。そして予選会前、選手発表の時となった。ミーティング。 みんなの前で選手発表をする洋治。 「では一組目から発表する。一組目……、」 次々に発表されていく選手達。しかし、みんなの最大の注目はエースが集う4組目に誰を持ってくるかであった。 「3組目、天才早川、阪口」 衝撃が走った。天才早川、もしくは阪口のどちらかを4組目でぶつけるであろうというのが大方の予想であったからだ。 一体4組目はどうするというのだ…? 「4組目、山本………、金尾!」 山の上の木々が、突然の強風に大きく揺れた。 「えっ!?なんだって!?今なんて言った??」 みな訳がわからないという顔で騒いでいると、みんなを代表して山本が言った。 「どういう事ですか!?金尾って…、金尾って監督じゃないですか!監督が出れるわけないじゃないですか!! 僕らは真剣に駅伝に向かっているんです。ふざけないでください!!監督は……学連に登録してないじゃないですか!!」 全日本大学駅伝東海地区予選会の要綱では、東海学生陸上競技連盟に登録している学生しか参加できない。 となっている。金尾監督は、選手として走る資格はないはずなのである。 すると突然、輪の外から甲高い声が聞こえた。 「それなら問題ありません!!」 …欣也である。 「今年の学連登録の際、なんだか嫌な胸騒ぎがしたため、監督と相談して、監督も学連として登録しておきました。 つまり、監督は予選会に出れるという事です!!!!!」 しかし…、学連登録してたって…、学連登録とかの問題じゃないだろ… 東海地区予選会は、10000mのトラックレースのチーム8人の合計タイムで争われる。10000mという距離は、 あと数年で還暦を迎えるおっさんに走れる距離じゃないのである。 もう終わった…。全員がうなだれているそのとき、洋治はおもむろに服を脱ぎだした。 シャツのボタンを外し、シャツを脱ぎ、ズボンのファスナーを下げ、ズボンを脱いだ… 『世羅高校』と書かれたユニフォームを着たおっさんがそこにはいた。正確には『世羅高校』の 文字はマジックの2重線で消され、その上につたない字で『名古屋大学』と書かれていた。ランパン には今までにもらったすべてのお守りが縫い付けてあった。 なによりも驚いたのは、その中身である。ユニフォームの上からでも、その発達した大胸筋、腹筋、背筋 などが見て取れ、また体の末端は恐ろしいほど細く、しまっていた。 後に羽生田は語る。 「ユニフォーム姿の洋治に、屋久島の杉の木が重なって見えました。」と。 洋治が口を開いた。 「皆が駅伝に取り組む姿を見て、俺も走りたくなった。そしてそのための努力を影ながらしてきたつもりだ。 みんな、俺を走らせてくれるかい?」 この時、みんながどんな顔をしていたのか僕はよく知らない。僕の目は涙で滲んでいたから… ただ、みんなが洋治を認めたことだけは確かだった。僕らは円陣をし、そして当日を迎えた。 さてさてどうなることやら?? TO BE CONTINUED… たすきは、ボーリングで一緒のチームだった、 大杉、久我ウイルス、原ちゃん、光田さんに回します。 |
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