｢はい、もしもし。｣


｢あ、ひかりちゃん？俺、航です。ごめんね、なんか突然電話かけちゃって。今ってテスト期間中だよね？七大も直前に控えてて忙しいに決まってるよね。ただ、どうしてもひかりちゃんに伝えたいことがあって、あわてて電話番号きいちゃったよ、ははは。｣



｢わたるせんぱい･･･｣



｢いや、確かにね迷惑かなぁとも思ったんだ。ひかりちゃんにとっての俺は三つも離れてるし、関わりは薄いし、何十人もいる先輩の一人に過ぎないってことくらいはわきまえてる。でもね･･･。｣





｢･･･｣





｢俺にとってのひかりちゃんは違うんだ。｣





｢せんぱい･･･｣





｢ひかりちゃんが山の上に現れたとき、俺は『グランドにヒカリが差した』なんて思っちゃったし、はは。それに同じ農学部だってことで親近感も持てたし、なにより、陸上に対してすごく真面目なところに魅力を感じていたんだ。だから、そんなひかりちゃんの大事な試合の前に一言頑張れが言いたかった。それだけなんだ。七大戦、頑張れよ。｣




｢先輩、あの･･･｣





｢ん、どうしたの？｣







｢僕、濱田です。｣




｢は？･･･まだ。オープン、頑張ろうな。｣

ガチャ、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、･･･



そう、選手のみなさん、コールミスには気をつけましょう。これが一番伝えたかったことです。


まあ何より、緊張しすぎることなく、自分が主役だという気持ちでレースに臨めるくらいが僕にとってはちょうど良かったんですが、人それぞれかな。

僕なりのアドバイスを考えたらこんなことくらいしか言えません。さぁ明日は早いのでそろそろ寝る準備をします。

では僕も川端に便乗して、明日僕の車に乗ってくれる唯一のポイント選手、平岡君にこの襷を。明日お互い遅刻しないようにね。

ひかりちゃんとの電話の中身はもちろん秘密です